WS誌にダックホーン、レネ・アリー登場!
Wine Spectator誌のシニアエディターであるティム・フィッシュ氏が連載するコラム“Exploring Wine with Tim Fish”にダックホーン・ヴィンヤーズのエグゼクティブ・ワインメーカーであるレネ・アリーのインタビュー記事が掲載されました。
レネは2003年にロバート・モンダヴィ・ワイナリーから引き抜かれてダックホーンに入社し、2014年にダックホーン・ヴィンヤーズのワインメーカーに就任。そして!この4月に昇進し、ダックホーン・ポートフォリオ全ラグジュアリー・ブランドのシニア・バイス・プレジデントに就任しました。(ちなみに4月に来日したデイナはダックホーン・ポートフォリオのプレミアム・ブランドのシニア・ヴァイス・プレジデントに就任。レネとデイナは、それぞれの担当ブランドを率いながら、ダックホーン・ポートフォリオ全体の発展を牽引していきます。)
少々、長いですがレネの人となりやキャリア、今年創業50周年を迎えるダックホーンの歴史そして”今”が分かるとても興味深い記事だったので、(ほぼ)全文を掲載します。
Steward of the Duckhorn Style/ ダックホーンスタイルの継承者
この20年間、ダックホーンはさまざまな変化を経てきたが、レネ・アリーだけはずっとそこにいた。2003年にロバート・モンダヴィ・ワイナリーから引き抜かれて入社し、オーナーが替わっても着実にキャリアを積み上げた。
「自分の居場所と思える会社に出会えたことを、本当に幸運だと思っています。私たちは常に自分たちらしさの核心を守ろうとしてきた。それは簡単なことではないと思います」とアリーは語る。
ダックホーン・ポートフォリオにとって、今はまさに転換期だ。2024年10月、ロサンゼルスを拠点とするプライベート・エクイティ会社バタフライが約19億5,000万ドルで同社を買収。
今年は創業50周年という節目の年でもあるが、2月には創業者ダン・ダックホーンが逝去し、悲しみに包まれている。
これまでアリーの担当はダックホーンおよびナパを拠点とするブランドに限られていたが、新たな役割では州内の他のワイン産地にも関わることになる。カレラはモントレー湾の内陸ホリスターに、ゴールデンアイはメンドシーノのアンダーソン・ヴァレーに位置する。ソノマ郡のコスタ・ブラウンとともに、いずれもピノ・ノワールを専門とするブランドだ。
「ピノは大量に飲んでいるので、ピノの世界に少し踏み出せるのは楽しいですね」とアリーは言う。各ブランドには専任のワインメーキング・チームがあり、ほとんどが独自の生産施設とヴィンヤードを持つ。「彼らは何をすべきかわかっています。私は日々の業務には関与しません。成長と進化の過程で、ラグジュアリー部門のリソースと声になりたいのです」
Merlot Master/ メルロの達人
先日、ラザフォード郊外に位置するパラダックスのダックホーン・コレクションでアリーと対面した。バタフライがブランド廃止を決定したのは、パラダックスの施設が大規模な改装を終えたばかりのタイミングだった。内装は趣があり、広々とした日陰のテイスティングエリアも備えている。
ダックホーンはセント・ヘレナのオリジナル・ワイナリーとテイスティングルームを1年間の改修のため4月に閉鎖したため、旧パラダックスの施設では現在、同社各ブランドのワインを提供している。料理監修・ディレクターのドミニク・オルシーニが、テイスティングを引き立てるフードとワインの体験を演出する。
アリーの半生とダックホーンの歩みについて語り合いながら、新旧いくつかのヴィンテージをテイスティングした。
筆者はカリフォルニア・メルロの評論を担当しているため、アリーはカリストガ近郊のスリー・パームス・ヴィンヤードから4ヴィンテージを開けてくれた。
1990年、2011年、現行リリースの2023年、そして新たにラインナップに加わったダックホーン・レガシー スリー・パームス ブロック5 2022年だ。
ダックホーン・レガシー スリー・パームス ブロック5は岩質で水はけの良い土壌を持つヴィンヤード内の独特な6ヘクタールの区画から生まれる。ブロック5はアリーのお気に入りだ。
スリー・パームスは約30ヘクタールにわたる扇状地に広がり、岩がちな火山性土壌が葡萄に深く根を張らせ、凝縮感あふれる果実を生み出す。ダックホーンの最も古いヴィンヤード・ソースのひとつであり、アリーはここがエイジング可能なメルロを生む力を持つことを証明しようとしてきた。
2017年にワイン・スペクテイター誌が2014ヴィンテージのダックホーン・メルロ ナパ・ヴァレー スリー・パームス・ヴィンヤードを年間最優秀ワインに選んだことで、その実力は証明された。
1990年のスリー・パームスは36年を経てなお飲み頃で、ブラック・チェリーとキャラメルのフレーバーが余韻を引き、土っぽさのニュアンスも感じられる。2011年は冷涼でやや雨がちだった難しいヴィンテージ。2014年のリリース時には100点満点で91点を付けたが、現在は美しく熟成し、明るくフレッシュなコアを保っている。
現在、ダックホーンは6種類のメルロを生産しており、メルロは全生産量の22%を占める。年間生産量は約40万ケース。
アリーとそのチームは、メルロのほかにも、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネのリージョナルおよびシングル・ヴィンヤード・ボトリング、さらにブラン・ド・ブランのスパークリングワインとホワイト・ボルドー・ブレンドも手がけている。
The Evolution of Dan’s Dream/ダンの夢の進化
ダン&マーガレット・ダックホーン夫妻が1976年にワイナリーを創設して以来、ダックホーンは”House of Merlot”だ。
当時カリフォルニアのワイン生産者はメルロをブレンド用品種としてのみ使い、単独でのボトリングは行っていなかった。米国ワイン経済学者協会(AAWE)によれば、1971年のカリフォルニア州におけるメルローの植栽面積はわずか約50ヘクタールだったという。
ダックホーン夫妻にとってリスクを伴う挑戦だったが、その賭けは見事に報われた。ダックホーンはカリフォルニア・メルロのスタンダードを確立するカテゴリーリーダーとなり、カリフォルニアを代表するラグジュアリー・ワイン生産者のひとつとしての地位を築いた。
その後、ゴールデンアイ、マイグレーション、バリューブランドのデコイなどを展開し規模を拡大。2017年にカレラ、2018年にコスタ・ブラウンといった有力ブランドも買収した。また何度かオーナーが交代し、一時期は株式上場も経験した。バタフライによる買収は、プライベート・エクイティ会社がダックホーンの経営を引き継ぐ3度目となる。
ダックホーンの成功の鍵のひとつは300エーカーにおよぶエステート・ヴィンヤードにある、とアリーは考えている。「ダンとマーガレットが早くから土地に投資してくれたことに、毎日感謝しています。資金力と先見性を持って『これが大事だ』と言い切れた。その継続性こそが私たちの核心です。今となっては土地の価格はずっと高いですし」。
From Jersey to Napa/ニュージャージーからナパへ
アリーはニュージャージー州で育ち、化学への興味からワインづくりの道に入った。高校卒業後、家族とともに南カリフォルニアへ移り、サンフランシスコ東湾岸にあるセント・メアリーズ・カレッジで化学と美術を専攻した。「化学はすごく直感的に理解できたんです」と彼女は言う。
「美術品修復の道も考えていましたが、まず社会に出て少し働いてみようと思いました。製薬会社チロンやジェネンテックのラボ職の面接を受けていたとき、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーのラボ・テクニシャン募集を見つけました。他のどの会社よりもずっとクールに思えたんです」
それは1999年のハーベスト直前のことで、アリーは収穫期にナパ・ヴァレー中に満ちていたエネルギーと興奮を今も鮮明に覚えている。「これは本当に特別でほかとは違う、と思いました。そこにいる人たちも素晴らしかったんです」。3年半モンダヴィで働いたのち、ラボ・スーパーバイザーとしてダックホーンへ入社。「モンダヴィは最高のトレーニングの場でした」
やがてラボからヴィンヤードとセラーでのより実践的なワインメーキングへと移行したアリーは、ダックホーンのハウス・スタイルを守りながら自分らしい表現を見出していった。
そのスタイルとは、ヴィンヤードのテロワールが持つ本質的な個性を保ち、各ヴィンテージのパーソナリティを捉えること。「それは私にとって本当に重要なことです。そのワインがどこから来たのかを表したい。そしてヴィンテージのニュアンスも伝えたいんです」とアリーは語る。
アリーにとってストラクチャーとテクスチャーも重要だ。「私はテクスチャーを重視するタイプです。しっかりとした骨格を持ちながらも、丸みがあり洗練されたワインであってほしい。」とアリーは言う。彼女のバレル・プログラムは広範で、22のクーパーと55種類以上の異なる樽タイプとサイズを使い分けている。
「チームのメンバーにはちょっと頭がおかしいと思われているかもしれません。でも、樽がワインにもたらすものが大好きなんです。樽でワインを作り変えたいのではなく、そこにあるものを引き出し高めてほしいんです」
バタフライ・エクイティの傘下でダックホーンとそのワイン・ポートフォリオの将来は明るい、とアリーは考えている。バタフライにはワイン業界での経験はなかったが、ライズ・ベーキング・カンパニー、チョーズン・フーズ、ピート&ゲリーズ・オーガニクスなど食品業界への投資実績を持つ。
「農業をよく理解していて、ラグジュアリーブランドを見る目がある。ワイン業界の今の状況もわかっていて、ちゃんと投資してくれています。生産面で締め付けられることは何もない。バタフライとの関係では、良い意味で期待を超えてきました」とアリーは力強く語る。


